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恒星進化コード「MESA」を使ってみる②: 大質量星(15太陽質量)をHe燃焼終了まで育てる

恒星は内部での核融合反応でエネルギーを得て輝き、成長していきます。主系列段階では、水素を燃やしHeへ変換していきます(HR diagram で最初右上へ向かう)。星の寿命のほぼ全てが、この主系列段階に費やされます。水素がほとんど消耗されると、星を支えるため中心温度を上げる必要があり、一旦星は少し収縮します(HR diagram で左上へ向かう)。水素が燃やし尽くされ、ほとんど He だけのコアが形成され、コア全体の温度も高くなり、その外縁部で水素の殻燃焼(shell burning)が始まります。この時、コアは重力収縮を続け、中心部の圧力が高くなり、水素殻燃焼付近の圧力勾配がきつくなることで、外層が外側へ押し出され大きく膨らみます。これが主系列星から赤色超巨星への進化です。この後、重力収縮を続けるコアでは次第に温度が上昇し、最終的には He を燃やせるようになります。今回は、この He を燃やし切って、CO コアを形成するまでの進化を計算してみます。



使用している MESA のバージョン: mesa-r15140


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0. 基本操作

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inlist とか入っているディレクトリで、

./mk -> コンパイル

./rn -> これで走る

基本的にこれだけです。


./re x??? -> これで途中から計算を再開できる。


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1. とりあえず、走らせてみる

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0) MESA をインストールして、下記リンクのディレクトリを好きな所に置く

1) inlist の中の mesa_dir で自分の MESA の場所を指定

2) make/makefile の中の MESA_DIR で自分の MESA の場所を指定

3) ./mk

4) ./rn

これでウィンドウが立ち上がって計算開始すれば ok。ウィンドウに出てる画像は、定期的に png/ の中に保存されるので、これで gif とか作ると復習できる。僕の場合 macOS Big Sur プロセッサ 2.3 GHz 8コアIntel Core i9 (macbook)で、この計算の終了まで 20分程度でした。


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2. 基本的なファイル

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inlist-> 計算で読み込むファイルリスト

inlist_pgstar-> pgstar (計算中のウィンドウ) の設定

inlist_make_pre_zams-> 主系列星@ZAMSになるまでの計算内容を記述

inlist_to_Heburn-> He core 燃焼終了までの計算内容を記述

history_columns.list-> LOGS/history.data の中身をどうするか記述

profile_columns.list-> LOGS/profile??.data の中身をどうするか記述

15M_at_ZAMS.mod-> ZAMS 時のモデル

15M_Heburn.mod-> He 燃焼終了時のモデル

src/run_star_extras.f90-> advance な事をしたい時に編集する Fortran コード

LOGS/history.data-> 計算経過がまとまってる (このデータで HR diagram とか書ける)

LOGS/profile??.data-> ある時間での星の内部構造の情報がまとまってる


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3. どこを変える?

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基本的に、inlist, inlist_?? あたりの中身を変えれば、標準的にMESAに備わっている計算は可能。新しい物理を入れたい時は、src/??.f90 あたりを編集する。


1) 回転速度を変えたい

-> inlist_to_Heburn の new_omega_div_omega_crit = 0.20 に今はなっているので、これを変える。15 Msun でこの値だと v_suf = 100 km/s ちょっとぐらい。


2) 金属量を変えたい

-> inlist_to_Heburn の new_Z = 0.014 を修正。もしくはZAMS になるまでの計算(inlist_make_pre_zams)の方で変える(若干?結果が違うっぽい)。


3) 初期質量を変えたい

-> inlist の中の inlist_to_Heburn を、inlist_make_pre_zams に置き換えて、 inlist_make_pre_zams の initial_mass とか、save_model_filename とかを変える。


4) overshoot を変えたい

-> inlist_to_Heburn の !mixing の下のパラメータを変更する。


5) 計算終了をどこにするか?

-> inlist_to_Heburn の

xa_central_lower_limit_species(1) = 'he4'

xa_central_lower_limit(1) = 1d-6

で今は決定している。中心の he4 の量を見て、fraction が 1e-6 を下回ったら計算を終了。炭素の着火時点とかを下みたいに定義もできる。

log_center_temp_limit = 8.69897 !0.5d8K

&star_job の方で、required_termination_code_string = ‘fe_core_infall_limit’ とすれば、鉄が潰れ始める所で計算を終了できる。具体的な鉄の落下速度は、

fe_core_infall_limit = 5d6 みたいに &controls で定義してあげる。


5) Reaction Network を変更

-> inlist_to_Heburn の new_net_name = 'approx21_cr60_plus_co56.net’ ここを変更


6) wind の変更

-> inlist_to_Heburn の ! wind の下を変更


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4. 結果の解析

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僕は、python の mesa_reader ってやつを使ってます。

https://docs.mesastar.org/en/r15140/using_mesa/output.html # mesa_reader の使い方とか output file のことの説明




これが、今回の計算の pgplot のウィンドウを動画にしたもの。この計算では、星の回転も入れており、子午面還流によって主系列段階でも、内側の CNO cycle で増えた窒素が外層へ運ばれている様子が分かります。

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